マイクロ法人向け「法人成り」のメリット
目次
経済的メリット:給与所得控除による節税
法人として社長自身に「役員報酬」を支払えば、その金額は会社側では【経費】として扱えます。また、その報酬(=給与)には「給与所得控除」が適用されます。
つまり、
- 役員報酬を経費算入し
- さらに役員個人の確定申告でその報酬から給与所得控除を差し引ける
という二重のメリットが得られます。
信頼性と社会的信用の向上
会社名義で契約や登記ができるようになり、個人事業よりも取引先からの信用度が高まります。マイクロ法人でも、近隣企業や取引先、分野の顧客から見れば“法人”という形態は大きな安心要素となります。
責任の限定化(有限責任)
個人事業主の場合、事業に関する責任は無限ですが、法人では出資額の範囲で責任が限定されます。万が一のリスクに備える面で、個人資産の保護にもつながります。
出張旅費日当の活用
法人では「出張旅費日当」という形式で、交通費や宿泊費とは別に手当を支給できます。
- 会社側では支給した出張手当を法人税上および消費税法上の経費として計上できます。
- 受け取る側(役員)には所得税・社会保険料がかかりません。
ただし、あまりに過大な金額は否認されるため、金額の制定には専門家の助言が必要です。
役員社宅制度の活用
法人が物件を借り、その住宅を役員に社宅として貸す制度も活用可能です。
法人は賃料を経費計上しつつ、役員から家賃を徴収することで利益を圧縮できます。
ただし、徴収する家賃が少なすぎると「実質給与」と判断される可能性もありますので、注意が必要です。
赤字の繰越が10年間可能
法人では、赤字(欠損金)が発生した場合、その繰越期間は最大10年間とされており、これは個人事業主の青色申告における3年間に比べて大幅に長い期間です。
これにより、初期に赤字の可能性があっても、将来の黒字時に損失と相殺することで法人税を効果的に減らすことができます。
消費税の免税期間
通常、事業者は「2年前の売上高が1,000万円を超えている場合」に消費税の納税義務が発生します。
ただし、開業1年目と2年目は「2年前の売上高」そのものが存在しないため、原則として消費税は免除されます。
これは「法人成り」をした場合でも同じで、個人と法人は明確に分けて判定されます。
例えば、個人事業で毎年1億円の売上があったとしても、法人を新しく設立すれば、その法人に「2年前の売上高」は存在しません。そのため、設立から2年間は原則として消費税を納める必要がありません。
この仕組みを利用すると、
- 個人事業で免税事業者になれる期間(最大2年)
- 法人にした後の免税期間(最大2年)
を組み合わせ、合計で最大4年間、消費税の免除を受けられる可能性があります。
ただし、「特定期間の課税売上や給与支払額」で免税が打ち切られるケースもありますので、マイクロ法人の場合でも必ず税理士に確認してから実行することが重要です。
社会保険の加入
法人は、たとえ社長1人だけの会社であっても、健康保険・厚生年金への加入が義務となります。
この点はデメリットと感じられることも多いのですが、実はマイクロ法人にとっては「うまく設計すればメリット」にもなり得ます。
例えば、役員報酬を月額5万円と設定した場合、
- 社長本人の負担:約12,000円
- 会社負担を含めても合計:約24,000円
で「健康保険」「社長の年金」「配偶者の年金(扶養に入れる場合)」までまかなうことができます。
つまり、少ないコストで国民健康保険や国民年金よりも有利な制度に加入できる可能性があります。
マイクロ法人経営で特に有利となる点
- 会社と役員の財布が実質同一のマイクロ法人では役員報酬を経費算入し、さらに個人で給与所得控除を受けられるメリットは非常に使いやすい節税です。
- 個人事業主と同じような働き方をしていても法人名義で契約・登記が可能になり、取引先や顧客からの信頼度が高まります。
- 出資額の範囲で責任が限定されるので、個人資産の保護につながります。
- 出張や移動が多いフリーランス的経営者には、出張手当制度が実用性高く、かつ税メリットが大きいです。
- 固定費として居住コストが一定の場合は、社宅制度で家計と法人のバランスを調整できます。
- スタートアップ期に赤字体質でも、10年間の欠損金繰越により、事業が軌道に乗った後の税負担を大きく抑制できます。
- 実質的に個人事業主時代と同じ働き方をしているのに消費税の免税期間が2年延びるのは大きな金銭的メリットがあります。
- 社会保険に加入することにより、個人事業主時代よりも少ない負担でより有利な制度に加入することができます。
太田和之税理士事務所代表。
東海税理士会所属。
マイクロ法人特化型税理士に特化した税理士として、マイクロ法人設立等のサポートを行う。
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